お知らせ・コラム
和紅茶の世界-知っておきたい日本生まれの紅茶のハナシ

明治24年創業、八王子のお茶屋・網代園(あじろえん)です。
「和紅茶」という言葉、皆さまは耳にしたことはありますか?
和紅茶とは、日本生まれの紅茶で
近年、お茶好きの注目を集めている茶種のひとつです。
「気になっているけど、詳しいことはよくわからない…」
「他の紅茶や緑茶とは、何が違うの?」
「どんな淹れ方をすればいいの?」
そんな疑問にお答えしたいと思い、記事をまとめてみました。
これから和紅茶を試したい方や
もっともっと和紅茶を楽しみたい方へ、
少しでもお役に立てれば幸いです。
-目次-
1.和紅茶ってどんなお茶?
・ 酸化酵素がカギ〈 緑茶と紅茶の違い 〉
・ 世界中で飲まれる紅茶〈 国産と外国産の違い 〉
2. 和紅茶はどのように生まれたの?
・ 近代茶業の父〈 多田元吉 〉
・ 紅茶用品種〈 べにふうき 〉の誕生
3. 和紅茶のおすすめの淹れ方は?
・ 酸素をたっぷり含んだ〈 沸かしたての熱湯を使う 〉
・ 〈 ジャンピング 〉によって、茶葉の成分を抽出
・ 風味を最大限引き出すため〈 2~3分しっかり蒸らす 〉
4. 終わりに
1.和紅茶ってどんなお茶?

和紅茶は、国内で生産される紅茶のことで
国産紅茶・日本紅茶・地紅茶とも呼ばれています。
産地や製造方法によって特色は異なりますが
日本の土壌で育まれた紅茶は、海外のものに比べ風味が柔らか。
近年は、リーフ(茶葉)やティーバッグの販売に加え
ペットボトル商品も増えてきています。
〈 緑茶と紅茶の違い 〉
お茶は、緑茶・紅茶・ウーロン茶などの種類がありますが
実はすべて同じ原料(チャノキ)から作られています。
では、なぜ見た目や味が異なるのでしょうか?
カギを握るのが、茶葉に含まれる 酸化酵素。
この成分が空気に触れると、茶葉の発酵(酸化) が進み
色や香り、味わいに違いが生まれます。
緑茶 … 生葉を蒸す・炒るなどして酸化酵素の働きを止めるため
(不発酵茶) 茶葉は緑色のまま。すっきりとした味わい。
紅茶 … 酸化酵素の働きを最大限活用し、葉は赤褐色に変化。
(発酵茶) 香りが強く、コクのある味わい。
ウーロン茶 … 発酵を途中で止め、適度に酸化させたお茶。
(半発酵茶) 緑茶・紅茶両方の性質を備えた独特の味わい。
なお、本来「発酵」という言葉は
味噌やヨーグルトのように、微生物の働きによる変化を指すもの。
お茶の場合は、茶葉自体の酵素が引き起こす変化なので
正確には「酸化」ですが、古くから発酵という表現が使われています。
〈 国産と外国産の違い 〉
お茶の生産量の70%を占めるほど、世界的人気を誇る紅茶は
インド・スリランカ・中国・インドネシアなどが主要産地。
外国産の紅茶と和紅茶との違いは、土壌や気象条件のほか
栽培されている茶樹の品種(中国種・アッサム種)も影響しています。
中国種 … 中国・雲南省原産。
比較的寒さに強い品種で、日本でも多く栽培。
苦み成分タンニンの含有量が少ないため
まろやかで優しい口当たりに。緑茶向き。
アッサム種 … インド・アッサム地方原産。
インドやスリランカなど、温暖な気候でよく育つ。
苦み成分のタンニンを多く含むため、コクや渋みが強い。
紅茶向きで、ミルクや砂糖を加えて飲むのにも適した味わい。
関連記事:お茶の原料・チャノキ(茶の木)のおはなし
2.和紅茶はどのように生まれたの?

紅茶の原型となるものは、中国の宋時代には誕生していたようですが
本格的に生産が発展したのは、ヨーロッパへの輸出が始まってからでした。
西洋人の嗜好に合わせるうち、緑茶より紅茶の輸出が多くなり
20世紀初頭ごろには、インドやスリランカでの供給も始まります。
一方、日本が紅茶産業に着手するのは、明治初期ごろのこと。
世界の需要は、緑茶から紅茶へと移行していたため
明治政府はこの流れに対応し、さらなる外貨を獲得すべく
紅茶の生産を強く推奨したのです。
〈 多田元吉 〉
幕臣としての経歴をもつ多田元吉(ただ もときち)は
大政奉還後、江戸幕府第15代将軍・徳川慶喜とともに駿河へ移住、
現代の静岡県丸子を開墾して茶園を開きました。
元吉の製茶技術を高く評価した明治政府は
紅茶生産が盛んな中国やインドの視察を命じます。
帰国後は、持ち帰った紅茶の原木を丸子で栽培し、
機械技術の研究や指導者養成などにも尽力しました。
日本人として初めて、ダージリンの奥地へ足を踏み入れた元吉。
伝染病とも闘わなければならない、命がけの調査の日々が
今日の国産紅茶の原点となっています。
〈 べにふうき 〉
第二次世界大戦以降、コスト面・品質面で
外国産に太刀打ちできない国産紅茶は、一度衰退しますが
1995年、日本で初めての紅茶用品種「べにふうき」が
品種登録されます。
これは、元吉が持ち帰った種子から選抜された「べにほまれ」と
ダージリン系の品種を交配してつくられたもので
紅茶らしい華やかな香りと、日本人好みのまろやかな飲み口が特徴です。
近年、和紅茶が再注目されるようになり
「べにひかり」「いずみ」など、いろいろな紅茶用品種が誕生。
緑茶用品種から紅茶を製造するなど、さまざまな研究が進んでいます。
ちなみに、べにふうきでつくった緑茶には
花粉やハウスダストによるアレルギーを抑制する
メチル化カテキンという有効成分が含まれています。
まだまだ発展途上の茶業界。
今後の新たな発見に、期待が高まりますね。
関連記事:茶処のおはなし(その1)
3.和紅茶のおすすめの淹れ方は?

最後に、和紅茶を淹れるときのポイントをご紹介します。
緑茶とはまた違ったポイントがありますので、ぜひ参考にしてみてください。
〈 沸かしたての熱湯を使う 〉
紅茶の風味を引き出すためには
酸素(空気)を含ませた熱湯を使うことが大切。
水道から汲みたての新鮮な水を
ポコポコと音が鳴るまで、しっかり沸かしましょう。
このとき、沸かしたお湯を魔法瓶などに移して放置したり
逆に沸騰させ続けてしまうと、水分中の酸素が抜けていってしまうので
注意してくださいね。
〈 ジャンピング 〉
沸騰直後のお湯を勢いよくティーポットに注ぐと、
ジャンピングが起こります。
ジャンピングとは、熱対流による上下運動のこと。
まるで踊るように、茶葉が上へ下へと揺れ動くことで
葉っぱ全体が広がり、湯の中に旨みが溶け出してくれます。
横幅のある丸い形のティーポットは。対流が起こりやすいので
初心者の方にもおすすめだそうですよ。
〈 2~3分ほどしっかり蒸らす 〉
ティーポットに湯を注いだら、
ふたをしてじっくりと蒸らします。
茶葉の細かさやお好みにもよりますが
リーフを使う場合は、2~3分ほど待ちましょう。
発酵させずにつくられる緑茶に比べ、
発酵茶である紅茶は、成分がゆっくりと抽出されます。
4.終わりに

今回は、和紅茶の魅力と歴史をご紹介しました。
緑茶との違い、外国産との違いで比較してみると
お茶がより奥深く、楽しいものに思えてきます。
まだ発展途上の分野ですから
私も、日々勉強を続けていきたいと思います。
本コラムでは、皆さまからのささいな疑問や
テーマのリクエストを受け付けております。
和紅茶に関するご質問・ご相談などがありましたら
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最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
ステキなお茶時間をお過ごしください。