お知らせ・店主ブログ
お茶の香気成分と効能 ― 香りが心と体にもたらす嬉しい健康効果のハナシ
明治24年創業、八王子のお茶屋・網代園(あじろえん)です。
皆さまは、「お茶の香り」といえば
どのような香りを想像しますか?
清涼感のあるさわやかな香り、花のような甘い香り、香ばしい香り…
人によって、いろいろなイメージが思い浮かぶと思います。
お茶を淹れたとき、ふわりと立ちのぼる香りは
私たちの体や心をほっと和ませてくれますが
近年研究が進み、ストレス解消や免疫力向上といった
健康効果をもつことがわかってきました。
この記事では、600種以上ある茶の香気成分のなかから
主要なものをピックアップし、それそれの特徴や効用を紹介していきます。
-目次-
1.緑茶の香気成分って?
・ さわやかな若葉の香り〈 青葉アルコール 〉
・ 良質な青のりのような香り〈 ジメチルスルフィド 〉
2. 紅茶の香気成分って?
・ 心落ち着く花の香り〈 リナロール 〉
・ 芳醇なバラの香り〈 ゲラニオール 〉
3. ほうじ茶の香気成分って?
・ 焙煎で生まれる香ばしい香り〈 ピラジン類 〉
4. 終わりに
1.緑茶の香気成分って?
緑茶の香りは、紅茶やウーロン茶ほど強くありませんが
その分、繊細で優しい香気を楽しむことができます。
〈 青葉アルコール 〉
青葉アルコールは、緑茶(日本茶)を代表する香気成分。
茶の原料であるチャノキに限らず、多くの植物の葉に含まれていて
草を刈った後などに感じる、青々とした匂いのもとになっている成分です。
その名のとおり、「新鮮な青葉の香り」が特徴で
毎年4月ごろから収穫が始まる茶の新芽に多く含まれ
新茶のフレッシュな香りは、この成分が主体となっているそう。
森林浴がそうであるように、緑の香りはリフレッシュ効果をもつため
ストレスの軽減や疲労回復、学習意欲の向上などにも有効です。
仕事や家事・勉強の合間には、ぜひお茶休憩を挟んでみてください。
〈 ジメチルスルフィド 〉
お茶の香りは、栽培方法によっても変化します。
たとえば、玉露や碾茶(てんちゃ※抹茶の原料)など
覆下栽培(※一定期間日光を遮る手法)で育てられた茶葉は
覆い香(おおいか)と呼ばれる独自の香りをもっています。
「良質な青海苔のよう」とも表現されるこの香りは
海苔などに含まれるジメチルスルフィドという成分に由来するもの。
多すぎると悪臭の原因になってしまう曲者ですが
お茶にはごく微量しか含まれておらず
他の香気成分と混じり合うことで
深みのある独特の香気をもたらしてくれます。
関連記事:今だから知りたい新茶と古茶(こちゃ)のおはなし
抹茶ができるまで-緑茶とは異なる栽培・製造工程のハナシ
2.紅茶の香気成分って?
紅茶の主な香気成分は、茶葉を発酵させる工程のなかで形成されますが
今回は、花香(はなか)と呼ばれる成分に着目したいと思います。
〈 リナロール 〉
リナロールは、ラベンダーやベルガモットなどに
多く含有する花香成分の一種。
「スズランのような清涼感ある香り」として知られています。
リナロールの鎮静作用には、リラクゼーションや睡眠を促す効果が。
また、カテキンと同様、抗菌・抗ウイルス作用をもっており
風邪やインフルエンザの予防にも役立ってくれます。
香水やアロマとしての活用はもちろん
紅茶を飲むだけで免疫ケアできるなんて、なんだかオトクな気分ですね。
なお、花香成分は日本茶(緑茶)より紅茶に多く
なかでも、アッサム品種でつくられるセイロン紅茶は
リナロールを豊富に含むそうです。
〈 ゲラニオール 〉
ゼラニウム、レモングラス、ローズマリーなどに含まれる
ゲラニオールは、「バラに似た華やかな芳香」が特徴。
香りによるリラックス効果以外にも、
エストロゲンという女性ホルモンの分泌を助ける働きがあり
肌の保湿や抗酸化など、美容面でも嬉しい効用を期待できます。
紅茶のなかでも、中国品種からつくられる
ダージリン紅茶や中国紅茶に多く含まれている成分です。
関連記事:日本茶の栄養素と健康効果のおはなし
3.ほうじ茶の香気成分って?
ほうじ茶の香ばしい香りには、加熱工程が関わっています。
〈 ピラジン類 〉
ピラジン類は、コーヒーやチョコレートなどに含まれる
「ナッツのような香ばしさ」を感じさせる香りです。
乾燥工程で火入れをおこなう緑茶にも含まれますが
さらに高温で茶葉を炒るほうじ茶には、このピラジンが豊富。
火香(ひか)、焙煎香(ばいせんこう)とも呼ばれています。
ほうじ茶の香気に大きな影響を与えているアルキルピラジンは
血液の流動性を高める作用が認められていて
脳梗塞を引き起こす動脈硬化の予防、冷え改善に効果があるそう。
むぎ茶やコーヒーにも含まれている成分ですから
気分やお好みに合わせ、上手に取り入れてみてください。
関連記事:冬にほっこり・ほうじ茶のおはなし
4.終わりに
お茶の香りを強く出すには、熱湯を使うのがおすすめなのですが
緑茶(煎茶や玉露など)の場合、苦みを感じてしまう可能性も。
そんなときは、一煎目は少しぬるめの温度で淹れ
二煎目以降、徐々に温度を上げていくと香りが引き立ち、
味わいとのバランスがとりやすくなります。
自分にとって心地よい香り・淹れ方を見つけた方は
ぜひ教えてくださいませ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
皆さま、良き新年をお迎えください。