お知らせ・店主ブログ

【ブログ】お茶摘みのおはなし

こんにちは。八王子の日本茶専門店・網代園です。

史上最も早い新茶の初取引が行われた今年。
店頭にも、旬の便りが届き始めました。

季節柄、今回はお茶摘みをテーマに
ブログを書いてみます。

 

 

お茶はどんな風に収穫するの?

最も歴史の古い手法は、皆さまご存じの手摘み(てづみ)
急斜面につくられた茶園や、玉露・抹茶の材料となる碾茶など
高級な茶葉を扱う茶園では、人の手による摘み取りが今でも続けられています。

新芽の状態を確認しつつ、一つひとつ丁寧に摘んでいくため
品質のよいものだけを選定することができますが
時間とコストがかかってしまう点が悩みどころでした。

明治末期ごろ、摘採鋏(手鋏)が考案されると
鋏摘み(はさみづみ)が普及していきます。
古茶の茎や葉が混入しないよう、事前に畝(うね)の整枝などが必要ですが
摘採効率は手摘みに比べ、なんと約10倍も向上。
上級煎茶の摘採や傾斜の緩やかな茶園などで、現在も使われている手法です。

その後、他の農業と同様に労働力不足が深刻化、機械の開発が進みました。
近年は、多くの茶園で機械摘み(きかいづみ)が採用されています。

昭和40年ごろに考案された可搬型摘採機は、
大きなバリカンのついた機械を、畝を挟み2人がかりで支えながら使用します。
送風機能により、刈った茶葉を後方に取り付けた袋へ収容できる優れもので
山間地域の多い静岡県などの茶処で主流の方法だそうです。

一方、乗用型摘採機は、畝をまたいだ車体上に人が乗って作業を行います。
摘採刃の高さを調節することで、芽揃いよく、品質の均一化が図れるのもメリット。
主に、平坦地が多い鹿児島県などの南九州地方で普及しています。

 

 

摘採時期はどうやって判断する?

新茶の時期になると、単位面積当たりの収量は
1日の間に7~10%増加するといわれていますが
とにかく量を増やせばいい、というわけではありません。

なぜなら、収量と品質は相関関係にあるから。
生長しすぎた葉は硬くなり、品質が下がってしまいますが
品質が最もよい時期は、まだ芽が小さく、収量も限られます。

茶農家さんたちは長年の経験や勘、下記のような指標をもとに
毎年、絶妙なタイミングを見極めているんですね。

出開き(でびらき)度 … 全芽数に対する出開き芽の割合、70%程度がよい
新芽硬化度      … 手触りに相当、重りを吊るした際の茎の湾曲具合など
新芽開葉数      … 生育が中程度の新芽が4~5枚開いたころがよい
葉色         … 新芽の色から黄緑~黄色が少し抜けたころがよい

  

 

摘み取りの際の注意点は?

一番厄介とされているのが、春の遅霜(おそじも)
収穫直前の4~5月にかけて、季節外れの霜が降りると
萌え出たばかりの柔らかな新芽が凍り、変色してしまうのです。

このため、茶園では
被覆法(資材で茶樹を覆い保温する)
散水凍結法(スプリンクラーで散水、潜熱放出を利用し低温から保護する)
送風法(防霜ファンで高所の温かい空気を地表へ吹き降ろす)
など、各々の地形や周辺環境に合わせた対策をとっています。

また、摘採直前の降雨にも気を配らなければいけません。
摘採した生葉は、成分変化(酸化)を起こさないよう
できるだけすみやかに加熱(蒸熱)する必要がありますが、
葉に雨(水滴)がついていると、蒸しの通り具合がまばらになるほか
蒸れ香といわれる独特の匂いがつき、品質低下の原因に。

この時期、日々変わる天気予報に
農家さんたちは「毎日が一喜一憂」だそう。
大変な苦労や努力に、本当に頭の下がる思いです。

 

 

まとめ

努力の結晶、そして豊かな旬の味わいが
一人でも多くの方へと届きますように。

それでは皆さま、すてきなお茶時間を。